横浜地裁前で傍聴券を求めて列を作る人たち=10月1日、横浜市中区で 証言台の前で語る元看護師は、写真で目にしてきたよりも小さく弱々しく映った。「全て間違いありません」と認めた罪の重さとのギャップは、すぐには埋まらなかった。 横浜市の旧大口病院(現横浜はじめ病院)で入院患者三人の点滴に消毒液を混入して中毒死させたとして殺人罪などに問われた久保木愛弓被告(34)の裁判員裁判が十〜十一月、横浜地裁で開かれた。初公判の一般傍聴席の抽選倍率は二六・五倍。発生から五年たってなお、注目を集めた。 裁判の争点は刑事責任能力の程度で、本人の個性や精神障害の状態を中心に審理が進んだ。一方で、背景が明かされるたび、「誰でも起こし得るのではないか」との思いは強まった。 被告は動機について、亡くなった患者の家族に責められた経験を挙げ、責められないように自分の勤務時間外に患者を殺そうとしたと説明した。仕事に自信がなかったが、悩みを周囲に相談できずにいた。延命措置に関わることや夜勤も、心身の負担になった。 業界団体や国の統計を調べても、患者やその家族からハラスメントを受けた人や精神障害による労災請求件数は多かった。ただ、再発防止のすべを探るために訪ねた医療関係者らは事件に関心を寄せながら、必ずしも自分たちと結び付けたがらなかった。 「ストレスのある看護師全てが殺人を犯すわけではない。事件を一般化することに違和感がある」。ある看護師は電話でそう言った。勤め先で取り組む心のケアについて、取材を終えた後で記事掲載を断られた。メンタルケアの専門家からは「今回の事件の特殊性に焦点を当てることが重要ではないか」との指摘を受けた。命を預かり、守っているという自負からくる言葉だと感じた。でも、それで良いのだろうか。 立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「犯罪はそもそも一定程度特殊なもの。更生には本人の原因を知ることも必要だが、予防にはならない。自分たちは頑張っているからと事件を遠ざけるのではなく、積極的に議論していくことが重要だ」と指摘する。 検察側が死刑を求刑した被告に対し、地裁は完全責任能力を認めた上での無期懲役という異例の判決を言い渡した。「苦しい評議でした」。家令和典裁判長は胸の内を明かした。 検察、弁護側の双方が控訴し、審理は高裁に移る。法廷で「死んで償いたい」と述べた被告自身はもちろん、判決に「納得できない」と訴えた遺族にとっても事件は終わらない。そして、向き合い続けるべきなのは、当事者だけではない。次の事件を防ぐ役目は、全ての医療関係者にあるのではないか。(米田怜央)=おわり 【関連記事】元看護師に無期懲役判決「娘の言うことを聞いていれば…」母親が悔やむ犯行3カ月前の説得 旧大口病院事件 関連キーワード 神奈川 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップ「有名人の娘だから?」と不安だった神田沙也加さんに宮本亞門さんが返した言葉 追悼ツイートで明かす文化・芸能(2021年12月19日)俳優 滝藤賢一さん 家族6人 2LDKで暮らしています!小池知事、まん延防止措置「考えていない」 東京都では初の「オミクロン株」のクラスター 社会(2022年1月5日)英語の早期教育は必要? 12カ国語を話す”語学の達人”ピーター・フランクルさんは懐疑的「母語を大切に」小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴 全国初か社会(2021年12月27日)蓄膿症の原因は鼻じゃない?蓄膿症に効く日本唯一の処方とはAD(源平製薬)株で残高1万が1000万に増殖?サラリーマンが試した明日上がる株がわかる裏技が賢すぎAD(株式会社カイザー)Recommended by
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