<アフターコロナのミライを描く>(1)無駄づくり 寛容の心 コンテンツクリエーター・藤原麻里菜さん

江東区の8畳ほどのアトリエで役に立たない発明品を作り続ける藤原麻里菜さん。手にするのは首がキツツキのように激しく前後する「キスマシーン」  床の間が荷物で埋まっていたら嫌だ。気持ちのいい暮らしには余白がないと。そう、人生だって。  巣ごもりの正月。テレビの特番に飽きたらのぞいてみてはいかがだろう。YouTubeチャンネルの「無駄づくり」。コンテンツクリエーターの藤原麻里菜さん(28)が自らの発明品を紹介するシリーズだ。  例えば「松崎しげるが覗(のぞ)いてくるマシーン」。藤原さんが部屋で読書していると突然、白い腕がカーテンをめくる。すき間からは憧れの大物歌手の笑顔が…。動画ではプログラミング言語をちらりと見せ、ものづくり番組であることもしっかり主張する。「くだらなさが最高」「とてつもなく無駄感」。コメント欄には視聴者からの絶賛が並ぶ。  これまでの発明品は二百点以上。二〇一三年にYouTubeで始めた活動の発信をツイッターやブログなどに広げたことで海外にも知られるようになった。一八年に台湾で初めての個展を開催し二万五千人を動員した。  社会の役に立たない「無駄づくり」。挫折体験が背景にある。横浜市の実家は服のデザイン会社を営み、子供のころから工作が好きだった。高校卒業後、もう一つ好きだったお笑いで生きていこうと、吉本興業の芸人養成学校に入学。卒業後に芸人デビューしたがステージでは「びっくりするほどウケなかった」。  吉本の中でYouTubeの企画が立ち上がり、メンバー募集に手を挙げた。人前に立つよりも「もともと好きだったインターネットで、マイペースで好きなことをやる方が向いている」と思ったからだ。  NHKEテレの「ピタゴラスイッチ」に登場するようなからくり装置を作る、と宣言したが「人に見せられる質の高い作品」ができない。窮地に追い込まれてひらめいた。「無駄なものづくりを始めたことにすれば、へたなものを作っても『失敗』ということにはならないんじゃないかな」。人の評価と関係なく、好きだからつくる。無駄づくりの言葉が浮かんだ。  「日常生活で感じたストレス、こうだったらいいなと思う感情」を形にする。コロナ下に制作した「オンライン飲み会緊急脱出マシーン」が代表作品。ボタンを押すとパソコンがフリーズしたときに表示されるグルグル模様が飛び出し、抜け出す理由にする。以前に発表した「インスタ映え台無しマシーン」も発想の原点は「あるある」。何を撮ろうとしても必ず指が写り込む仕掛けをした。  不要不急の行動が戒められたコロナ下で「無駄」を排除する空気が強まった。効率性や生産性という言葉ばかりが叫ばれ、実用的でないものへの視線が厳しさを増したように見える。絵画や彫刻、ジャズなど、挑戦してきたことがどれもうまくいかず「無駄づくりに救われた」藤原さんは「効率化した生活は本当に大切なものを見失ってしまうかもしれない」と考える。  役に立たないと思われているものは、まだ世の中にないものだ。思い切って形にすればいい。何かの価値が見つかるはずだ。「生きづらさを感じている人に無駄づくりを楽しんでほしい。そして、それが許容される社会であってほしい」。貫くのは他者への寛容のまなざしだ。 (井上靖史)      ◇  「新しい日常」が叫ばれる二度目の新年を迎えた。人々の意識や生活習慣が変容した世界で、私たちはどのように生きていけばよいのだろうか。「アフターコロナの未来」を考える。 【発明品あれこれ】 ◆入ったまま出掛けられるこたつ  荷物を運搬する際に使うキャリーカートに持ち運びできるバッテリーを載せ、こたつと一緒に乗り込む。坂道を下り、屋外でミカンを食べる気持ちのよい体験ができる。上り坂の帰り道は、こたつを抱えて戻らないといけない。 ◆歩くとおっぱいが大きくなるマシーン  ゴムボートなどに使う足踏み式の空気入れとサンダルを接着剤で固定。空気入れにつないだ風船を胸に入れながら歩くと、胸元がどんどん大きくなっていく。残念なことに、せっかく着ていたブランドの服が伸びてしまう。 ◆会社を休む理由を生成するマシーン  言葉が書かれた2種類の紙をルーレットのように回し、つなげる。前半は「旦那が」「父が」などと主語にあたる部分、後半はそれに続く具体的な理由が書いてある。動画では「単純に」と「生誕100周年のため」の組み合わせが誕生。 関連キーワード 東京 新型コロナ logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップ小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)技能五輪Road to Tokyo レストランサービスの“若き匠”金メダルへの猛特訓に密着AD(TOKYO MX on 東京新聞)「有名人の娘だから?」と不安だった神田沙也加さんに宮本亞門さんが返した言葉 追悼ツイートで明かす文化・芸能(2021年12月19日)窪塚洋介さんが築いた離婚後の家族の形 子どもを尊重…今の妻も前の妻も一緒に精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴 全国初か社会(2021年12月27日)凰稀かなめ 一度きりの人生、自分らしく!(2021年12月24日)蓄膿症の原因は鼻じゃない?蓄膿症に効く日本唯一の処方とはAD(源平製薬)「記憶力がぐんぐん上がる魔法」と話題の”脳トレ”が凄い!AD(株式会社Art of Memory)Recommended by
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日期:2022/01/01点击:13