台風１９号　今も傷痕　　クリスマス用イチゴ出荷できず

イチゴ栽培の復旧に取り組む堀井一雄さん。水害対策で高所に苗を植えていたが、想像以上の浸水に見舞われた＝伊豆の国市長崎で 　台風１９号による県東部や伊豆地方の農業・観光の被害が深刻だ。浸水した伊豆の国市のイチゴ農家では、クリスマス向けの出荷の大半が不可能になった。観光シーズンが到来する中、南伊豆町ではジオパーク内の遊歩道が崩れ、復旧のメドが立たない。函南町の農業観光施設は商品がそろわない状態が続く。立て直しは始まったばかりで、先行きは見通せない。　（杉原雄介、山中正義） ◆農業 　「こんなもん採ってもしょうがないか…」。狩野川の支流が流れる伊豆の国市長崎でイチゴを栽培する堀井一雄さん（６２）は、水にぬれて腐ったイチゴを一粒ずつ手に取りつぶやいた。 　先月十二～十三日の台風でビニールハウス内の約四万五千株のうち約七割が水没。浸水に備え、苗は地面から百五十センチほどの高さに植えていたが、防げなかった。出荷は先月九日に始めたばかり。クリスマスの時期は例年、高値で取引されるが「今年はほぼ出荷できない」と声を落とす。 　希望は、新たな花を咲かせる苗が出てきていることという。「イチゴは何とか生きようとしている。人間が諦めるわけにはいかない」 ◆観光 　南伊豆町では、国連教育科学文化機関（ユネスコ）に認定された世界ジオパーク内にあるジオサイト「入間千畳敷（いるませんじょうじき）」へ続く歩道が三カ所、土砂崩れや路盤崩落で通行止めだ。資機材を搬入する作業道がなく、工事の工法や財源も決まっていない。千畳敷は海底火山の痕跡を残し「秘境」とも称される人気スポット。町企画課の担当者は「涼しくなり歩きやすい時季だったのに」と悔やんだ。 　伊東市でも、城ケ崎海岸の全長六キロの散策コース「自然研究路」が倒木で立ち入り禁止だ。倒木が多い上、主要道路から離れ、復旧が進んでいない。 　函南町では、ワサビを使った食品を販売する「わさびミュージアム」（同町塚本）が一メートル以上浸水、土産物などが被害を受けた。年間三十万人近い観光客が訪れる人気施設。紅葉シーズンを見据えて十月十九日に営業を再開したが、商品はまだ六割ほどしかそろわない。 浸水が引いた直後のわさびミュージアム。商品や棚などが散乱している＝函南町で（山本食品提供） ◆対策要望 　被害事業者からは行政に対し、被災後の対応改善などを求める声が上がる。 　わさびミュージアムを運営する山本食品の山本豊社長（４７）は「一番大変だったのは災害ごみの処理。置き場も個人のごみが優先で、企業のごみはなかなか受け入れてもらえずにたらい回しになった」とし、「災害時に個人と企業のごみ置き場を分けるなど対策を」と要望。前出のイチゴ農家の堀井さんは、「これ以上は（浸水に）備えようがない。狩野川に新たな放水路を造るしかない」と訴えた。 入間千畳敷へ続く歩道の崩落現場＝南伊豆町で（南伊豆町企画課提供） 関連キーワード 静岡 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップ小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)窪塚洋介さんが築いた離婚後の家族の形 子どもを尊重…今の妻も前の妻も一緒に「絶対隠す」と決めた過去、ありのままに語り厚労省に採用…施設で育った女性「少しでもいいことに」社会(2022年1月4日)俳優 滝藤賢一さん 家族6人 2LDKで暮らしています！「感染者、あっという間に倍」尾身会長が危機感　高齢者の3回目接種が最優先課題社会(2022年1月7日)精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴　全国初か社会(2021年12月27日)記憶力を上げる”近道”！毎日10分動画見るだけで記憶力が驚くほど激変AD（株式会社Art of Memory）「時代をつくるつもりで、一台をつくった」新型アウトランダーPHEV誕生AD（三菱自動車工業株式会社）Recommended by
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