＜チュウ目の逸品　キタカン２０２０＞ケロリン桶製造５７年　関東プラスチック工業（高崎市）

ケロリン桶のバリ取りは今も手作業＝いずれも高崎市の関東プラスチック工業で 　銭湯や温泉地でよく見かける黄色いプラスチック製の湯おけ「ケロリン桶（おけ）」。内外薬品（現・富山めぐみ製薬、本社富山市）の鎮痛薬「ケロリン」の広告として、１９６３年に誕生した。誕生から５７年、これまで約３００万個が製造された。当初から製造しているのが、業務用プラスチックトレーなどを手掛ける高崎市八幡町の「関東プラスチック工業」。 　ケロリン桶の製造は、原料のポリプロピレンのペレットを機械に投入し、約２４０度の高熱で溶かして金型に注入するところから始まる。 　この金型は、ケロリン桶を販売・管理している「富山めぐみ製薬」の所有で、世界にここにしかない。さらに関東型と関西型の２種類ある。関西型は関東型よりサイズが一回り小さい。関東は洗い場が入り口近くにあるので、蛇口からおけに湯を入れてかけ湯をするが、関西は浴槽が先にあり湯船から直接湯をすくい取るので関東型だと重すぎるため。 　関東プラスチック工業社員の新井則昭さん（５４）が型からおけを外して水につけて冷ます。できたばかりのおけは、ほのかに温かい。新井さんは「ケロリン桶は他のおけに比べて厚みがあるので、厚いほどゆがみやすくなるため、きちんと冷やさないといけない」と説明。ここから新井さんの職人業が発揮される。 　型を流し込むときにできる「バリ」と呼ばれるとがった部分ができる。新井さんは底のバリをペンチで切り取り、残った部分を機械で研磨する。その後、おけのふちのバリをカマとナイフで削る。シュルッ、シュルッと音をたて、まるでリンゴの皮むきのようだ。最後におけ全体を手で触り、バリが残っていなければ完成。「風呂では皮膚がふやけて柔らかくなるので、使う人がけがをしないように気をつけている」。「バリ取り」は現在、６、７人の社員が担当している。１人で約２００個作っている。 　プラスチック製品は機械による自動化も進んでいるが、同社取締役で工場長の栗原正広さん（６１）は「細かいバリを取るために手作業は欠かせない。ケロリン桶を一つ一つ手作業で支えるのは、これからも変わらない」と話す。 　完成して次は「ケロリン」など文字の印刷。と思ったが、栗原さんは「印刷の工程は企業秘密です」とピシャリ。同社の社員も見られないという。 　５０年以上使っても壊れない「永久桶」と呼ばれるケロリン桶。丁寧な手作業と謎が歴史を守っている。　（砂上麻子） 金型から取り出され冷却されるケロリン桶 ◆６４年・東京五輪の存在大きく 　ケロリン桶（おけ）の誕生には１９６４年の東京五輪の存在も大きかったという。当時は木製おけが主流だったが、東京五輪を控え、プラスチック製品の導入が進んでいた。再び東京五輪が開かれる。日本人の生活や街が大きく変化する中、変わらず愛されるケロリン桶。丁寧なものづくりが歴史を支えていると感じた。 関連キーワード 群馬 砂上麻子記者 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップ小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)俳優 滝藤賢一さん 家族6人 2LDKで暮らしています！「絶対隠す」と決めた過去、ありのままに語り厚労省に採用…施設で育った女性「少しでもいいことに」社会(2022年1月4日)これは「しつけ」なのか、親のメンツなのか〈お父ちゃんやってます！加瀬健太郎〉精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴　全国初か社会(2021年12月27日)「感染者、あっという間に倍」尾身会長が危機感　高齢者の3回目接種が最優先課題社会(2022年1月7日)【脳は若返る】70代で脳年齢30才以下になる人続出中の「スマホ脳トレ」が話題AD（株式会社Art of Memory）「日本にあればOK」持ち主じゃなくても実家の価値を調べられる方法AD（リビンマッチ）Recommended by
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