<11日に考えた>台風の中、土のう積み「恐怖と焦り」 昨年「19号」襲来時の足利・中橋

台風19号が襲う中、周囲の堤防より低くなっている中橋の進入路に土のうを積む作業が行われた(足利市提供)  足利市の中心市街地に架かる「中橋」は、両岸の進入口が堤防よりも約二・五メートル低く、大雨時に濁流が流れ込んでくる危険性が高いと指摘されてきた。昨年十月十二日の台風19号の際、市は氾濫を防ぐため橋の両側に人海戦術で土のうを積んだ。渡良瀬川上流の草木ダム(群馬県みどり市)が緊急放流を検討する中、切羽詰まった状況での作業だった。関係者に当時の状況を聞いた。 (梅村武史)  「いつ大水が押し寄せるかもしれないという恐怖と不安。一刻も早く作業を終えなければという焦りもあった」。足利市災害対策本部の中で、土のう積み作業を指揮した大竹一弘・都市計画課長はこう振り返る。  市では二〇一二年に一度だけ土のう積み訓練を実施しており、それを元に一四年に対応マニュアルを作成しているが、実際の運用は初めてだった。  台風当日の昨年十月十二日午後九時十分、現場に駆り出された市職員、建設関係者は約二十人。雨が降りしきり、川の水位が橋桁近くまで上がる中での危険な作業は緊急放流の予定時刻の同十一時を過ぎた翌十三日午前零時半まで続いた。  三時間超を費やして積み上げた土のうは高さ約一メートル。それでも堤防より一・五メートルほど低い。結果的に緊急放流が取りやめられ、土のうが役割を果たすことは無かったが、その有効性を確認することもできなかった。  もし、中心市街地に水があふれれば、渡良瀬川決壊で三百人超の市民が亡くなった一九四七年九月のカスリーン台風の悲劇を繰り返す可能性もあった。  大竹課長は今回の経験で多くの反省点が見つかったという。「一トン土のうの保管地が三キロ離れており、何らかの原因で道路が通れなくなるなど運搬ルートが寸断したらアウトだった。また、市内の台風被害が広範囲でマンパワーの結集に時間がかかった」と話していた。  現在、中橋は老朽化もあり、国、県、市に市民を交えて架け替え議論が続いている。 ◆ダムへの流入量 予測と現実にずれ 台風19号で最大2184万立方メートル(東京ドーム18杯分)の水を貯留し、下流の洪水を抑えた「草木ダム」=群馬県みどり市で  中橋から四十二キロ上流にある渡良瀬川本流唯一のダム「草木ダム」は県北西部、群馬県東部に降る雨水の受け皿になっている。  台風19号襲来に対し、予備放流をして貯水の許容量を増やして備えた。しかし流入量は十月十二日正午すぎから増加を始め、午後七時には毎秒千六百立方メートル超に達した。  ダムの水位は上がり、堤頂の下三メートルの標高四五四メートルに設定された洪水時最高水位を超える可能性も予測された。草木ダム管理所は同日午後八時、「三時間後に緊急放流実施」を関係機関に通知した。その後、流入量が減少し、結果的に緊急放流は行われなかった。関係機関への中止連絡は十三日午前一時だった。  同ダム管理所の担当者は「予測と現実にずれが出た。台風が去っても流入量が減らない近年の傾向もあり、難しい判断だった」と説明している。 ■昨年10月12日の作業の様子  宇都宮地方気象台によると、台風19号は昨年10月12日午後9時から翌日正午ごろ、県内に最接近した。最も激しく雨が降ったのは最接近前の12日午後3時から同9時ごろ。市関係者のメモなどを基に、当時の作業の様子を振り返る。  12日午後8時すぎ 市に「午後11時に草木ダムを緊急放流」の連絡が入る。土のう担当の市職員、提携の建設土木関係者を招集。  同8時45分 橋周辺の住民に避難勧告。  同9時 県が中橋封鎖。  同9時10分 重機で1トン土のう40個を橋両側に積む作業に着手。続いて人力で20キロ土のう40個を積み、隙間に埋める作業開始。  13日午前0時半 土のう積みほぼ終了。追加作業に向け待機。  同1時すぎ 市に緊急放流取りやめの連絡あり。  同1時半 土のう作業中止を決定。  同8時 土のう片付け作業開始。  同9時17分 通行止め解除。 <緊急放流> 正式名称は「異常洪水時防災操作」。ダムへの流入量が多く、治水制御が不能となる限界ライン(洪水時最高水位)を超える可能性がある際に実施される。流入量と同量を放水することでダムを守るが、洪水防御機能は失われる。 関連キーワード 栃木 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line
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日期:2020/02/11点击:13