＜ひと物語　コロナ編＞飲食店ができることを　水戸のうどん店経営・松岡献一郎さん（５２）

「飲食店としてできる支援をしていきたい」と話す松岡献一郎さん＝水戸市で 　築百五十年の古民家を改装した店舗は、周囲に田園風景が広がる小高い場所にある。緑に囲まれ、聞こえるのは鳥の鳴き声と風で葉がこすれる音のみ。店内には涼しげな風が吹き抜け、落ち着いた雰囲気が漂う。 　水戸市有賀町のうどん店「たらいうどん椛（もみじ）や」。その代表を務める。新型コロナウイルスの感染は落ち着き始めているが、街の活気が戻らないことに心を痛める。「飲食店は『街のもの』というイメージが強い。できることをしていきたい」と前を向く。 　讃岐うどんの本場、香川県出身で、建設機械メーカーの営業職として、一九九九年に水戸に赴任。住まいのために、現在の店舗である古民家を購入したが、ほぼ同時に大阪に転勤となった。 　元々趣味でうどんを打ったり、食べ歩きをしたりしていた。「うどん屋は年を取ったらやりたいと思っていたが、思い切ってやってみよう」と、一年間の大阪生活後に脱サラ。故郷の香川県で技術を学び、十二年前に開店した。 　新型コロナウイルスの感染拡大による休校で給食がなくなり、食事を毎回用意するのが大変なひとり親家庭を支援しようと、「こどもの日」の前後に持ち帰り料理の無料提供をした。 　飲食店という立場からできることを考えての行動だったが、店の懐事情も厳しかった。感染拡大で客は激減し、店先に行列ができる大型連休中でも閑散としていた。売り上げは例年の四分の一ほどまで減少し、いまも二、三割減と、元の状態には戻っていない。 　無料提供に難色を示すスタッフもいたが、やってみると「助かりました」「ありがとう」といった声をもらい、「スタッフも張り合いが出た」と振り返る。 　厳しい状況の中でも、支援の手を差し伸べたことに「飲食店の社会的な役割は何かと考えたら、おなかを満たすこと以外にもできることがあると思った」と、自分に言い聞かせるように語った。 　支援の取り組みはほかにも。薬味ネギを仕入れている常陸太田市の農家で、取引先のホテルなどに売れなくなり、野菜が余っていると聞き、店で十品目の野菜の詰め合わせを販売した。食肉卸売業者の肉の販売もした。 　政府が配布するマスク「アベノマスク」を有効活用するために、店内で使える食事券千円分と交換する取り組みもしている。集まったマスクは、公共施設や福祉施設に寄付することを考えている。 　客は徐々に戻りつつあるが、まだまだ「大出血中」と明かす。「コロナ前よりもいい状態にならなければ、商売は続けていられない。人と距離を取るなど、ギスギスした社会ではなく、楽しい、美しい世界に戻りたい」と願う。（松村真一郎） ◇　◇ 　アベノマスク（未開封）と食事券（五百円分を二枚）の交換は、椛やで六月末まで受け付けているが、なくなり次第終了。系列のうどん店「利八」では、食事券の利用や交換はできない。問い合わせは、椛や＝電０２９（２５９）４８２６＝へ。 関連キーワード 茨城 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップ小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)技能五輪Road to Tokyo レストランサービスの“若き匠”金メダルへの猛特訓に密着AD（TOKYO MX on 東京新聞）なぜうその報告　答えず　川口いじめ直接謝罪　元校長メモ読み上げ「深く反省」首都圏ニュース(2022年1月7日)これは「しつけ」なのか、親のメンツなのか〈お父ちゃんやってます！加瀬健太郎〉精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴　全国初か社会(2021年12月27日)コロナワクチンの3回目接種、政府が高齢者に前倒し実施へ　気になる副反応は？オミクロン株への効果は？社会(2022年1月6日)主婦ライターのイチオシ「４つだけ覚える0円英語学習」1日30分の英語系ユーチューブが凄いAD（株式会社Creajoy）「黒酢の21倍」耳鳴り世代が号泣の裏ワザとはAD（アイリンクス）Recommended by
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