＜話　まち　人＞世界遺産れんが間近に　韮山反射炉１６０年の積み重ね

工事用ネットがあるものの、今まで近づけなかった距離で韮山反射炉を見ることができる。伊豆の国市文化財課の林さん（左）から説明を受ける記者＝いずれも伊豆の国市で 　保存修理工事のため現在、工事用シートで覆われている世界遺産の韮山反射炉（伊豆の国市）。「見る価値なし」と思いがちだが、ちょっと待ってほしい。実は高さ約２．５メートルの足場が特設され、れんが積みの煙突を普段より間近で見られるようになっているのだ。傷み具合や色合いが分かり、１６０年の歴史の積み重ねを感じられる。今しか味わえない魅力だ。　（渡辺陽太郎） 　反射炉は品川台場（東京）を築くなど、西洋砲術を普及させた幕末の韮山代官江川英龍が築造。一八五七年に完成し、大砲製造用の鉄を鋳造した。稼働は十年に満たなかったが、その後も地域に愛されてきた。 　これまで三回の工事が行われ、今回は三十年ぶり四回目。昨年十月に始まり今年十月末まで、劣化した約一万四千個のれんがの交換や補修などを行う。 保存修理工事で工事用のシートで覆われた韮山反射炉 工事開始前の韮山反射炉＝９月１６日 　市文化財課の林亮介主査（３１）に案内してもらった。近づくとカバーに覆われた反射炉がいや応なしに目に入る。初めて見た昨年九月に「想像以上に小さい」と思ったが、再度目にして「がっかり感」が増した。 　だが林さんは「間近で見られる今だから魅力も感じやすいですよ」。言われた通り足場に立つと「意外といいかも」と思い始めた。 　れんがは築造時のものが多く所々が欠け、一部は窪（くぼ）みになっている。色も赤や灰色、わずかに残るしっくいの白などさまざま。一九五七年の工事で補強のため設けられた鉄の枠「鉄骨トラス」も武骨さを演出している。普段は五メートルほど離れた囲いの前から見上げるしかないが、今は約二メートルと近い。気付くことがたくさんあるようだ。 近くで見られるようになったれんがの壁 　「足場だけじゃありません」。林さんはプラケースに入ったれんがを指さした。前回の工事で取り外したという築造時のものだ。普段は保管しており、これも特別公開中。一つ約七キロで持ち上げていいという。「重い！」。すぐに腕を下ろしてしまった。れんがは河津町産で、二万個超が水路などで韮山に運ばれた。幕末の運搬の苦労に思いをはせた。 　反射炉の見学者は世界遺産に登録された二〇一五年度に約七十二万六千人いたが、昨年度は十八万人に減少。ネットには「がっかり遺産」というありがたくない評価もある。 　一方、市は反射炉の見学と市内にある江川邸で江川英龍の功績を学んでこそ、反射炉本来の魅力が分かると考えている。歴史スポットを巡る周遊バスのＰＲの強化や、反射炉と江川邸をつなぐ「花の動線」の整備などを検討している。 　反射炉は築造時、しっくいが塗られ真っ白で、鉄骨トラスもなかった。保存のためいずれは、しっくいを塗らざるを得ないという指摘も専門家から出ている。「時代とともに姿を変えるのが反射炉。その姿はいつでも『今だけ』なんです。そんな魅力も感じてほしい」。林さんはそう結んだ。 関連キーワード 静岡 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップなぜうその報告　答えず　川口いじめ直接謝罪　元校長メモ読み上げ「深く反省」首都圏ニュース(2022年1月7日)俳優 滝藤賢一さん 家族6人 2LDKで暮らしています！精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴　全国初か社会(2021年12月27日)これは「しつけ」なのか、親のメンツなのか〈お父ちゃんやってます！加瀬健太郎〉小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)コロナワクチンの3回目接種、政府が高齢者に前倒し実施へ　気になる副反応は？オミクロン株への効果は？社会(2022年1月6日)「記憶力がぐんぐん上がる魔法」と話題の”脳トレ”が凄い！AD（株式会社Art of Memory）記憶力を上げる”近道”！毎日10分動画見るだけで記憶力が驚くほど激変AD（株式会社Art of Memory）Recommended by
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