工場内で次々に製造されるレモン牛乳＝いずれも栃木市で 口の中いっぱいに広がる豊潤な甘さとかんきつ系の香り－。「レモン牛乳」の愛称で親しまれる「関東・栃木レモン」は昭和の郷愁を感じさせる栃木県民のご当地ドリンクだ。生乳に砂糖やレモン香料を加えた乳飲料。戦後の甘いものが貴重だった時代に生まれ、令和になっても変わらない味を守る。栃木乳業の工場で製造され、今では関東一円のスーパーなどに並ぶ。 同社は、先々代社長が一九四七年、栃木市の永野川の橋の下で牛二頭を育て始めたのが起こり。現在の工場は静かな住宅地に立ち、六千四百平方メートルの敷地をトラックが行き交う。 「広く愛される会社でありたい。積極的に見学者を受け入れています」と総務部課長代理の吉村明勇（はるお）さん（５６）。工場見学を取り仕切る元営業マンは軽妙な語り口調にジョークを交え、見学者を楽しませる。 レモン牛乳について見学者に説明する吉村明勇さん 工場見学では、同社の沿革や製造する乳飲料について学び、試飲もできる。続いて自動化された製造工程を見る。最後に商品や関連グッズ三十種が並ぶ直売所へ。一人一本、レモン牛乳のプレゼントもある。 七月中旬、市内の高齢者グループが訪れた。従業員から笑顔で迎えられた中島よし子さん（７８）は「給食で飲んでいた懐かしいふるさとの味。今も変わらないのがうれしい」。小宮政宏さん（７４）は「子どものころはぜいたく品で飲める子は限られていた。今の子はうらやましいね」。 実はレモン牛乳の生みの親は同社ではなく、宇都宮市にあった関東牛乳。戦後、同市周辺や県北部のみで売っていた。特別な日の学校給食、遠足のお供として愛されていたという。 だが二〇〇四年、後継者が見つからず廃業。地元から惜しむ声が上がると栃木乳業の先代社長が一肌脱いだ。原材料から製法までノウハウの全てを受け継ぎ、〇五年に販売を再開した。 「引き受けたのは両社社長の友情。採算は度外視だった。味も紙パックのデザインもそのまま。唯一、着色料だけは天然素材のベニバナに替えてあります」と吉村さんは説明する。〇九年、県出身のお笑いコンビ「Ｕ字工事」がネタにしたことで予想外のブレーク。県内の駅や高速道路のサービスエリアでは土産としても人気だ。 「団塊世代には懐かしい味、若者には新鮮な味として受け入れてもらった」と横塚一宏総務部長（６０）は喜ぶ。入れ替わりの激しい飲料の世界で約七十年、味も形も不動の商品は珍しい。 （梅村武史） ＜栃木乳業＞ 松倉敬士現社長の祖父で北海道出身の文作さんが栃木市に「松倉ミルクプラント」を創業し、１９６３年、現社名に。栃木市大平町川連４３２。東北自動車道栃木インターチェンジから約１０分、ＪＲ両毛線・東武日光線栃木駅から徒歩約１５分。工場見学は月～木曜午前の約１時間。３週間前までに予約が必要。原則１０人以上の団体が対象。問い合わせは同社＝電０２８２（２４）８８３１＝へ。 関連キーワード 栃木 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップ「絶対隠す」と決めた過去、ありのままに語り厚労省に採用…施設で育った女性「少しでもいいことに」社会(2022年1月4日)窪塚洋介さんが築いた離婚後の家族の形 子どもを尊重…今の妻も前の妻も一緒に小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)技能五輪Road to Tokyo レストランサービスの“若き匠”金メダルへの猛特訓に密着AD（TOKYO MX on 東京新聞）「感染者、あっという間に倍」尾身会長が危機感 高齢者の3回目接種が最優先課題社会(2022年1月7日)精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴 全国初か社会(2021年12月27日)記憶力を上げる”近道”！毎日10分動画見るだけで記憶力が驚くほど激変AD（株式会社Art of Memory）「時代をつくるつもりで、一台をつくった」新型アウトランダーPHEV誕生AD（三菱自動車工業株式会社）Recommended by
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