「大藤の奇跡」励みに前へ　台風で冠水　あしかがフラワーパーク

台風直後の１３日、濁流で幹まで水につかった樹齢１５０年の大藤（あしかがフラワーパーク提供） 　国内外から年間１６５万人が来園する観光地「あしかがフラワーパーク」（足利市迫間町）は、台風１９号の大雨でかつてない深刻な被害を受けた。イルミネーション機材の大半は水没。だが、樹齢１５０年のフジは冠水したものの奇跡的に無事だった。４本の「大藤」に励まされ、全面復旧に向け従業員らの奮闘が続いている。　（梅村武史） 　「大藤が生き残ったことが救い、従業員のモチベーションになっている。一日も早い全面再開を目指す」。運営会社の早川公一郎社長（３８）は復旧作業が進む園内を見渡しながら語った。 　「六百畳」（約千平方メートル）の広大な藤棚は、一九九七年に開園された「あしかがフラワーパーク」の象徴だ。園の前身で、市内の別の場所にあった「早川農園」からの名物で、前例のない移植プロジェクトも全国の注目を集め、「奇跡の大藤」と呼ばれて愛されてきた。大藤四本と白藤のトンネルは県指定天然記念物にもなっている。この藤棚の美しさから、同園は二〇一四年、ＣＮＮの「世界の夢の旅行先十カ所」に国内で唯一選ばれた。 　その楽園にも濁流は容赦なく襲いかかった。台風が通過した十二日、園近くの尾名川が氾濫。土のうを積むなど対策を施したが約九万四千平方メートルの敷地のほぼ全域が冠水した。西ゲートには一・七メートルの高さまで水が来た跡が残る。 　大藤も幹の半分ほどが水に漬かり、状態が心配されたが、担当職員が無事を確認。「来年もまた花が咲く」という喜びが、打ちのめされたスタッフらを奮い立たせてくれた。 無事だった大藤について語る早川公一郎社長＝いずれも足利市で 　だが、復旧への道のりは厳しい。営業再開へ動きだせたのは水が引いた十四日から。従業員約百五十人が施設やイルミネーションの清掃を始め、花を植え替えた。十八日にようやく電気や水道が通り、二十日から営業を再開したが「七、八割の内容」（関係者）という。園内にはがれきが高く積まれ、同時並行で復旧作業が続く。 　見ごろだったサルビアの一種のアメジストセージは半分近くが傷み、消費税増税に合わせて入れ替えた販売時点情報管理（ＰＯＳ）レジ三十機、調理機器、自動販売機などが水没。被害総額は数億円になるという。 　再開を聞き、埼玉県加須市から訪れた夫妻は「フラワーパークのファンで何度も訪れている。大藤が無事でほっとしました」。千葉県香取市から親類と訪れた椿智範さん（６６）は「台風の傷痕が痛々しいが、よくぞここまで」と従業員らの努力に感心していた。 　夜間のイルミネーション「光の花の庭」は、全国の夜景鑑賞士が選ぶ全国イルミネーションランキング・イルミネーション部門で、一六年から三年連続で全国一位を獲得した園の目玉事業だ。機材の八割が水没したため点検中で、見通しが立たない状態で十一月二日の点灯を決めた早川社長は「多くの被災施設の先頭になって復旧していく姿を見せたい」と強い決意を口にした。 台風１９号の影響で、園内の全域が冠水した「あしかがフラワーパーク」＝１３日、本社ヘリ「あさづる」から（沢田将人撮影） 関連キーワード 栃木 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップ小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)技能五輪Road to Tokyo レストランサービスの“若き匠”金メダルへの猛特訓に密着AD（TOKYO MX on 東京新聞）「絶対隠す」と決めた過去、ありのままに語り厚労省に採用…施設で育った女性「少しでもいいことに」社会(2022年1月4日)俳優 滝藤賢一さん 家族6人 2LDKで暮らしています！「感染者、あっという間に倍」尾身会長が危機感　高齢者の3回目接種が最優先課題社会(2022年1月7日)精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴　全国初か社会(2021年12月27日)記憶力を上げる”近道”！毎日10分動画見るだけで記憶力が驚くほど激変AD（株式会社Art of Memory）「時代をつくるつもりで、一台をつくった」新型アウトランダーPHEV誕生AD（三菱自動車工業株式会社）Recommended by
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