水戸空襲の体験を話す岡田さん=いずれも水戸市で 太平洋戦争で、水戸市街地が米軍の空襲を受け、焼け野原となった水戸空襲から74年を迎えた2日、体験者が戦争の記憶を語り継ぐ講演が、市内の県立歴史館で開かれた。水戸空襲を経験した市内在住の岡田志朗さん(91)は「二度と戦争しないため、思いやりのある世界になることを望む」と話した。 (水谷エリナ) ◆水戸空襲「あんな経験、もう二度と」 水戸・岡田志朗さん(91) 岡田さんは当時十七歳で、水戸商業学校(現在の水戸商)に通っていた。米が配給制になったり、服装を統制されたりし「普通の生活が戦争によって変わった。天皇や国のために命をささげるという徹底した教育を受けた」と、当時の様子を説明した。 勤労動員で日立市の軍需工場へ行っていた一九四五年七月、米軍による艦砲射撃や空襲を経験した。「外に出ましたが、足がすくんで走れなかった」 日立市が壊滅的な被害を受け、工場での勤労が難しくなったことから、実家がある水戸市へ戻った。そのわずか半月後、水戸空襲があった。 空襲の前日、米軍が予告ビラをまいた。その時の心境について、日記には「ばか野郎、わが皇国民がこんな言葉にだまされてたまるか」「来るなら来い」などと強気な言葉をつづっていた。日立で空襲を経験してさえも、「軍国少年で、勝利を信じていた」と振り返る。 だが、実際に水戸市内で空襲が始まると、防空壕(ぼうくうごう)に逃げ、爆撃の激しい音を聞きながら、なすすべもなく縮こまっていたという。 命はかろうじて助かったが、水戸が焼け野原となり、多くの人が亡くなった。「とても悲しく、涙が出た。戦争とはひどいものだと感じた。あんな経験は二度としたくない」と話した。 講演会は、市立博物館が主催。夏休み中の子どもら約百人が参加した。終戦記念日の十五日午前十時からも、戦争体験者二人を招き講演会が予定されている。無料で参加できる。 ◆妹と弟失った満州からの逃避行 牛久・森彦昭さん(78) 旧満州での逃避行について話す森さん 講演会では、中国でソ連兵から逃れ、終戦後に本土へ引き揚げてきた戦争体験者も招かれた。旧満州(中国東北部)で生まれた牛久市在住の森彦昭(ひこあき)さん(78)が約一年に及ぶ逃避行の経験を語った。 森さんの父が南満州鉄道の社員だったため、旧満州北部の孫呉で生まれた。一九四五年八月にソ連兵が迫ると、逃避行が始まった。 十一月、当時四歳だった森さんは母や妹、弟と一緒に約二千キロ離れた撫順(ぶじゅん)へ逃げた。しかし病気がはびこり、森さんも死にかけた。命を取り留めたが、妹と弟は亡くなった。母は精神的に不安定になり、青酸カリを森さんに飲ませて、心中しようとしたこともあったという。 米軍が日本人を救出しているという情報を得ると、二人は葫蘆島(ころとう)へ向かい、日本行きの船に乗ることができた。 ソ連兵から逃げている間は、居場所が分かるのを恐れ「泣かない子どもだった」と森さん。京都府の舞鶴港に降り立つと「大泣きしましたね」と声をつまらせた。 <水戸空襲> マリアナ基地を飛び立った160機の米軍のB29による空爆で、当時の水戸市街の8割が焦土と化した焼夷弾(しょういだん)爆撃。1945年8月2日午前0時31分から2時16分までの約1時間45分の間で、約1145トンもの爆弾が投下された。死者は300人を上回った。空襲の2日前には米軍が予告ビラをまいていたが、憲兵や警察が回収していた。 関連キーワード 茨城 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップ「絶対隠す」と決めた過去、ありのままに語り厚労省に採用…施設で育った女性「少しでもいいことに」社会(2022年1月4日)ジブリ美術館をコロナ禍が直撃 来館者は7分の1、大幅赤字に… 思い出のある人たちがふるさと納税で続々支援小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)技能五輪Road to Tokyo レストランサービスの“若き匠”金メダルへの猛特訓に密着AD(TOKYO MX on 東京新聞)「感染者、あっという間に倍」尾身会長が危機感 高齢者の3回目接種が最優先課題社会(2022年1月7日)精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴 全国初か社会(2021年12月27日)主婦ライターのイチオシ「4つだけ覚える0円英語学習」1日30分の英語系ユーチューブが凄いAD(株式会社Creajoy)「記憶力がぐんぐん上がる魔法」と話題の”脳トレ”が凄い!AD(株式会社Art of Memory)Recommended by
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