＜チュウ目の逸品　キタカン２０２０＞ウクレレ生むからっ風　生産量日本一、三ツ葉楽器（前橋市）

完成したウクレレを演奏する大沢茂社長（左）ら三ツ葉楽器の皆さん＝いずれも前橋市上大島町で 　ふるさとを代表するものとは何だろう？　温泉、納豆、イチゴなどなど。思い浮かぶものは人さまざま。世間で広く知られているが、実は群馬、茨城、栃木の“キタカン”（北関東）でつくられているものも多い。そんなキタカンのキラリと光る「逸品」を紹介する。　　　　　◇ 　ウクレレは、ハワイ生まれの伝統的な楽器だ。温かみのある音色は、青い海や南風を思い起こさせる。だが「フェイマス」や「ゼファー」ブランドのウクレレで知られ、生産量日本一の三ツ葉楽器は冬場に吹く乾燥した強風「上州のからっ風」が吹きすさぶ前橋市に立地する。「実は、この湿気のない強い風や夏の高温多湿が生産に向いているんです」と話すのは社長の大沢茂さん（７０）だ。 　材料となるマホガニーやハワイアンコアなどの木材は、搬入されてすぐに使うと反ったり曲がったりするため、３～５年間、屋外にさらして安定させてから加工を始める。「暴れる木をいじめるんです。そこから職人がどうするか見極めていく」 職人らの手で丁寧に作られるウクレレ 　同社の創業は１９４８（昭和２３）年。当初はウクレレではなく、学校教材用木琴を生産していた。ただ新学期の春には売れても、夏になると需要が減るのが悩みだった。 　好機は昭和３０年代に到来した。ハワイアン音楽が注目されるようになり、同社はウクレレの生産を開始。「ブルー・ハワイ」を歌う米国の人気歌手エルビス・プレスリーらにあこがれた大勢の人たちはこぞってウクレレを買い求めるようになり、全盛期には同社では年間３万本を売った。小型家具の製造にも進出し、二本柱で売り上げは好調だった。 　しかし、同４０年代に入ると、フォークやロック音楽がブームに。人気の楽器はギターなどに移った。同社のウクレレの月産は３０～５０本にとどまり、撤退も検討された。それでも家具でもうけられている分、少ないながらも製造を継続。当時の工場長は設計や部品を見直すなどして、改良を重ねていた。 　そして１９８９（平成元）年となる前ごろ、高木ブーさんらが弾くウクレレが注目されるようになり、人気は復調。月産１０００本と安定するようになった。大沢さんは「２０年間売れなかったが、やめずによかった」と振り返る。 　これまでに生産した本数は５０万以上。初心者から第一線のプロまでが愛用している。大沢さんは「いい音で、音程が取れ、弾きやすい楽器です」、職人の一人、大崎耕陽さん（２５）は「一本一本、同じ品質でいい音が出るよう作っています」と胸を張る。 　大沢さんは「ウクレレはまだ趣味としての楽器。学校での音楽教育で、子どもたちにも弾いてもらえれば」と若い世代への広がりに期待する。　（池田知之） ◆初売りに行こうかな 　ウクレレは親しみやすい楽器だ。初心者でも弦を左手の指で押さえてつま弾けば音が出る。大沢さんは「小さくて邪魔にならないのもいい」と笑う。音も大きすぎず、日本の住宅事情にも向いているようだ。一年の計は元旦にあり。楽器店の初売りに行ってみようかな。 関連キーワード 群馬 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップ小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)窪塚洋介さんが築いた離婚後の家族の形 子どもを尊重…今の妻も前の妻も一緒に「絶対隠す」と決めた過去、ありのままに語り厚労省に採用…施設で育った女性「少しでもいいことに」社会(2022年1月4日)これは「しつけ」なのか、親のメンツなのか〈お父ちゃんやってます！加瀬健太郎〉精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴　全国初か社会(2021年12月27日)「感染者、あっという間に倍」尾身会長が危機感　高齢者の3回目接種が最優先課題社会(2022年1月7日)「日本にあればOK」持ち主じゃなくても実家の価値を調べられる方法AD（リビンマッチ）【脳は若返る】70代で脳年齢30才以下になる人続出中の「スマホ脳トレ」が話題AD（株式会社Art of Memory）Recommended by
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