乗客、作業員の健康大丈夫？　原発事故後９年ぶり　常磐線、３月に全線開通

内部被ばくの危険性を訴える杉井文彦さん（左）と照沼靖功さん＝水戸市で 　東京電力福島第一原発事故の影響で一部区間の不通が続くＪＲ常磐線が３月１４日に全線開通する。茨城と東京、東北を結ぶ鉄路が９年ぶりにつながるのは本来なら朗報だ。しかし、福島県内では、いまだに放射線量が高く、立ち入りが厳しく制限される帰還困難区域内を通過する。乗客や乗務員、作業員らが被ばくで健康を害する危険はないのか。全線開通に反対する労働組合「動労水戸」の組合員に現場の声を聞いた。　（佐藤圭） 　照沼靖功（やすのり）さん（３１）はＪＲ東日本勝田車両センター（ひたちなか市）で車両検査などに従事する。検査の際にフィルターを掃除すると、マスクを着けていても、ほこりなどで鼻の中が真っ黒に汚れる。「帰還困難区域でフィルターに放射性物質が付着し、それを作業中に吸い込んで内部被ばくする可能性が高い」と危ぶむ。 　ＪＲ東日本水戸支社によると、不通区間の復旧作業に当たってきた作業員らを対象に、被ばくの有無を調べる健康診断を年二回実施しているほか、不通区間での試運転が始まった昨年十二月以降は、外部被ばくの累積放射線量を測定できるガラスバッジを乗務員に配布。一方、車両点検については「車両に放射性物質が付着することはないと考えている。運転再開後も車両点検は通常通り」（広報担当者）としている。 　照沼さんの職場では昨年秋、会社側から全線開通について説明があった。「放射線量を下げる取り組みについての説明はあったが、一番聞きたかった内部被ばくには言及がなかった」と照沼さん。内部被ばくに関する説明会の開催を会社側に提起したが、回答はないという。 ＪＲ双葉駅を通過する試運転の電車＝昨年１２月、福島県双葉町で 　杉井文彦さん（６２）はＪＲ関連会社の勝田車両センター内事務所で車内清掃のスタッフとして働く。「ドアを開ければ当然、外気が入ってくるし、雨の日は床までべとべとになる。車内の清掃でも内部被ばくは不安だが、会社は対策を講じようとしない」と吐露する。 　動労水戸は二〇一八年十月、常磐線全線開通の反対署名五千二百筆をＪＲ東日本本社に提出した。照沼さんは「全線開通の何が悪いのか、というのが一般的な反応だろう。鉄道人として開通自体に異論はないが、それが今なのか」と疑問を呈した上で続ける。「署名集めで、福島原発に近いことや放射線量の話をすると、『大丈夫なのか』という反応が多かった」 　杉井さんも「ちゃんと説明すれば、全線開通がとんでもない話だと分かってくれる。今夏の東京五輪までに開通させるのは国策だ。原発事故をなかったことにしようとしている」と強調する。 　照沼さんは会社側に重ねて注文する。「多少線量が高くても、乗客の安全を守るために作業する。しかし、本来は専門家の指導のもとで内部被ばく対策を講じるべきだ。健康被害が出てからでは遅い」 ＜ＪＲ常磐線＞　日暮里（東京都）から千葉県北西部、茨城、福島両県を通って岩沼（宮城県）に至る全長３４３．７キロ。２０１１年３月１１日に発生した東日本大震災で被害を受けた。段階的に復旧してきたが、放射線量が高い帰還困難区域を含む富岡（福島県富岡町）－浪江（同県浪江町）間の２０．８キロが不通となっている。同県大熊町内では東京電力福島第一原発から最短約２．５キロの地点を通過する。政府は１月１７日、不通区間の駅周辺などの避難指示を３月４日、５日、１０日に解除すると決定し、これを受けてＪＲ東日本は３月１４日に全線開通すると発表した。 関連キーワード 茨城 logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line 関連記事ピックアップなぜうその報告　答えず　川口いじめ直接謝罪　元校長メモ読み上げ「深く反省」首都圏ニュース(2022年1月7日)40歳で医学部に入学、3児を育てながら医師に 何歳になっても、何度でも挑戦できる小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」社会(2021年12月29日)窪塚洋介さんが築いた離婚後の家族の形 子どもを尊重…今の妻も前の妻も一緒に精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と言ったのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴　全国初か社会(2021年12月27日)徳川家康「しかみ像」は慢心の戒めに描かせたのではなかった？　三方ケ原の負け戦（いくさ）とは無関係とする新説首都圏ニュース(2022年1月4日)スバル、トヨタ抜き「最も再販価値の高い車ブランド」にAD（NewSphere）高級化粧品信者だった私が認めた！「50代最後の砦化粧品」とはAD（ストレピア）Recommended by
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