五輪への提言 尊重して対策に生かせ

2021年6月19日 来源:东京新闻

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら感染症の専門家有志が、東京五輪・パラリンピックの感染リスクを評価し、対策を列挙した提言をまとめた。専門家の警鐘だ。「安心安全な大会に」と言うなら、政府や大会組織委員会は提言を尊重し、実際の対策に反映すべきである。

 提言内容は、感染リスクを低くするには、人の移動を極力抑えるということに尽きる。

 無観客での開催が感染リスクを最も低くし、望ましいとの意見を真っ先に挙げた。観客を入れる場合は、国内イベントよりも制限を厳しくして人数を減らす。感染再拡大や医療態勢逼迫(ひっぱく)の兆しが見えた場合、迷いなく無観客に切り替えることを推奨している。

 夏休みと重なる期間に観客数を増やせば、国民の対策への意識を緩めかねないとして、街頭イベントや飲食店での観戦なども自粛するよう求めている。

 政府には、五輪期間中でも必要になれば緊急事態宣言の発令など対策強化を促している。中止の可否の判断は避けたが、感染リスク軽減を求める姿勢は理解する。

 これに対し、提言への政府の姿勢は冷淡に映る。感染が終息しない中では、五輪開催の可否も検討課題だったはずだが、菅義偉首相は提言前日の十七日、緊急事態宣言解除を発表。記者会見で「有観客」での開催方針を表明し、観客数の上限は他の国内イベントの制限に準じる考えも示した。

 国内の流行状況は五輪の人出も影響する。開催を既成事実化するのではなく、宣言解除の判断前に提言を聞くべきではなかったか。

 首相が五輪開催にこだわるあまり、科学的知見と向き合う姿勢を欠くなら国民の命と健康を守る責務を果たしているとは言えない。

 厚生労働省の専門家会議に示された五輪期間中の感染拡大シミュレーションでは、インド型の変異ウイルス(デルタ株)の影響が大きくなれば、宣言の再発令を迫られる懸念がある。高齢者らへのワクチン接種が進んでも、爆発的な感染拡大が起これば、重症者も増えると指摘している。東京都の新規感染者数が下げ止まっている状況も、懸念材料だ。

 提言は感染リスクへの認識や対策を「早急に市民に」説明するよう求めてもいる。政府や組織委は提言を聞き置くのではなく、誠実に耳を傾けねばならない。


日期:2021/06/30点击:13